煌めく光の中で


by fusk-en25

思いに耽る。。

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夫がまだいた頃だったから。。もう10年ほど前にはなるが。
両親の墓参りに京都に行った。
4月半ばで、やたらうららかな日和に。。
いつもならタクシーに乗ってさーっと墓地まで行ってしまうのに。
たまにはゆるゆるバスに乗って。坂道を歩いていこうと言うことになった。
バス停に行く道すじに「伊と忠」の履物屋の前を通った。
この店の下駄は好きだった。
特に「あと丸」と言う名前通りに後ろがポックリのように丸くなっていて、
表は黒の塗りで裏の見えないところに朱赤が塗ってあった下駄に。
深紅の鼻緒をすげて履くのが最も好きだった。
春から夏の終わりまでこの「あと丸」の下駄をゴム草履の代わりに
こちらに来るまで20代の初めから10年ほどは何足も履き潰した。
「今でもあと丸があるのかしら?」
ウインドウには見当たらない。もう無くなったのかな?とウインドウをしげしげ見渡していたら。。
中年の女の店員さんに「何かお探しですか?」と声をかけられた。
買う目的はなかったからそう告げて。
ついでにウインドウに見当たらない「あと丸はもう無くなったのですか?」と尋ねてみた。
「ございます。お見せしますからどうぞ中に入って見て行ってください」と勧められて。
でも日本に住んでいないこと。石畳では下駄を履くこともなくて、買えないと断った。
「買っていただかなくても構いません。まだその下駄を作っているのを見ていただきたいのです」
と返事が返って来て。それならばと店に入って。
店の奥から出してこられたあと丸を何足か見せてもらってお茶まで呼ばれた。
帰り際に「よう見てくれはりました」とお礼まで言われて。。
何とも。優雅な客商売だと。夫とも店を出てから顔を見合わせ「京都らしいな」
「ほっこりした」とちょっと幸福な気分になった。。

今度、京都に行ったら。もう履くことはおそらくないけれど。
持っているだけの。。楽しみのためにあの下駄を買ってもいいかな?なんて気もする。
藍染の浴衣にやっぱり黒塗りのあと丸に深紅の鼻緒をすげて。。
素足で履いたら素敵だろうなあ。。と。

私自身の歳月だけは随分経ってはしまったけれど。。
柔らかな夕陽を見ながらそんなことを。。夢想していた。









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Commented by pallet-sorairo at 2018-02-26 18:59
こんなふうに自分の作っているものに愛着を感じてくれるい人がいたら
職人さん冥利に尽きるのだと思います。
嬉しかったんだろうなぁというのがよくわかります。
それにしても素敵なお話しですね。
いまお聞きしても、ほっこりします。
Commented by fusk-en25 at 2018-02-27 02:16
> pallet-sorairoさん
京都には縫い針を作っていたり。鍋釜包丁。桶屋などの老舗が
まだまだ残っていて、
そうも間口は大きくせずにさすがに近年綺麗にはなりましたが
入ると何となく懐かしい気分にはなります。
Commented by アンジー  at 2018-02-28 14:59 x
こんにちは!
なんとも優雅な京都の思い出ですね あと丸っていうんですね
うちの母も 亡くなる前の頃 自分の嫁入りに持ってきた下駄を 夏にゴム草履がわりに 愛用してました
なんだか なつかしく温かく思い出しました(*^^*)
今年の夏は 私がはいてみようかしらね
Commented by ゆき at 2018-02-28 18:58 x
あと丸。。。私も夢想しました(^-^)
黒塗りに深紅の鼻緒♥それを履いてた頃のfuskさんのことも...

きっと まだ造られていることでしょうね(^-^)
Commented by fusk-en25 at 2018-03-01 09:01
> アンジー さん
3年前に実家を処分する時に。子供の頃に履いていたポックリも残っていました。
今から思うとあれも持ってきたらよかったかな?
なんてふと思ったりします。
断捨離と反対の生き方やな?とも思うのですが。。
Commented by fusk-en25 at 2018-03-01 09:02
> ゆきさん
まだ作られていたらいいなあとは思うのですが。
その頃ももうポピュラーではなかったようです。。
by fusk-en25 | 2018-02-26 08:48 | 追憶 | Comments(6)