頼んでいたワインを息子が持って来てくれた。スキーに出かけた帰りにワインの産地によるから「いるか?」と聞いてきたので
とりあえず赤と白を半ダースづつ頼んだ。
「一人ではお酒は飲まない」と決めて8年が経つ。
でもせっかくのワイン。どんな味か1本ぐらい試飲しようと、まず白を開けてみた。
果物の香りがふんわりして、辛口のスッキリした味に。
ワインを試飲しては買っていた時代を思い出す。。
ある年の夏のヴァカンス。ブルゴーニュ地方に車で行った。
あちこちの小さな村々のワインを試飲して。何本づつか買い。
試飲の時は口に含む程度で飲みすぎてはいけないのを承知しているつもりでも
並々とグラスに注がれたワイン。ともすると飲みきってしまう。
「酒飲みの卑しさやなあ」と笑いながらも
3軒か4軒の酒蔵で試飲しているうちに酔っ払ってしまい、
予定地まで行かずにその村に泊まってしまったこともある。
赤ワインの酒蔵。確かFleurieフルーリで、
「次にPouilly-Fuisséプイイーフュッセに行くのですが。どこかいい酒蔵をご存知ありませんか?」
と尋ねてみた。
「ああ それならここに行かれたらいい。うちもそこで白は買っているんですよ」
と名前と住所を教わった。
村について私たちはもう教わった酒蔵で買うつもりでいる。
それでも一応試飲はして。「6本ください」と言うと。
ギロリと主人に睨まれて「奥さん。値段も聞かずに買うのかね。白は高いんだよ」と。
あれまあ、払えないような値段か?と内心ビクビクしながら
「ごめんなさい」と値段を尋ねた。
幸いにして払えないほどの高さではなかったが、確かにそれまで回って来た村々の赤ワインの倍もする。
もちろんワインの味も格別美味しかったのだが。
商売っ気の全くない頑固そうな爺さんに惹かれて。
それ以来その村を通るたびに立ち寄り。蔵主とも仲良くなった。
何年か後。11月の中旬に行った時「今年のワインの樽を開けたから飲むかい?」と言って
石油を吸い出すポンプのようなものを樽に突っ込みコップに注いでくれた。
ジュースともワインとも呼べないようなまだプクプクと発酵してどぶろくに近いようなワインだったが、
なんとも香りも良くて美味しい。
「これ欲しい」と言うと。
「売り物じゃないし、途中で味が変わるよ」と言いながらワインの瓶3本に入れてくれた。
車中、瓶が動かないようにしっかり持ったまま。家に帰り着いたが。
もうその味はかなり進化して。。どんどんお酒らしくなっていた。。。
ワインの村々も少しづつ近代化はして。もうこんな頑固そうな素朴な酒蔵主も少なくなった。
息子とも「プイイーフュッセの時代が懐かしいね」と話している。