若くして亡くなった藤原伊織は私と同世代、同郷だからか共感することが多い好きな作家である。
普通?の勤め人ながら、内面に裏社会のやるせなさを秘めた翳りのような男を描くのがうまいと思う。「テロリストのパラソル」「手のひらの闇」「ひまわりの祝祭」「シリウスの道」などどれも好きな作品だが あまり人気のない?らしい初期の「ダックスフントのワープ」の青さや妙に固いところも好きだ。
ハードボイルド?としては仕方がないが
ここでこんなに上手くことが運ぶ筈はないと思えるような甘いところが最初は目に付いた。
でも晩年の「ダナエ」や「遊戯」には
それが全く感じられないほど透き通った作風になったように思えて。
もうちょっと生きていて欲しかったなぁと思う。
「テロリストのパラソル」の主人公はうらぶれたバーの店主をやっているのだが、
そのバーの酒のあてはたった1種類。ホットドッグだけで 。
しかも客に注文されてからパンにはさむキャベツを刻む。と言う。
藤原伊織が子供の頃 野球場でホットドッグを買ってもらい
世の中にこれほど美味しいものがあるのかと感激しながら食べたのだろう。
その思いを店主の回想につなげたシーンには。
同世代の私にもホットケーキやプリン グラタンなどを初めて食べた時の驚きが
懐かしい嬉しさとなって今も残っている。
時代を共有した感覚と言うのだろうか。
ホットドッグのキャベツをわざわざ注文を受けてから刻むこだわりに。
忘れがたいシーンでもあった。
フランスのキャベツはザワークラフトに使うような硬いものがほとんどだが
近頃はアジア系の店で時々、柔らかい日本風?のキャベツに出会うこともある。
野菜の中でキャベツの最も好きな私は一人で食べきるには大きすぎるとは思いながらも
今日もためらわずキャベツを買ってきた。
明日の昼ご飯は勿論ホットドッグに決まっている。